2012

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第20回伊豆高原アートフェスティバル
高須賀優ブリキ画展
2012.5.1〜5.31
Gallery青樹





高須賀さんは今回のフェスティバル参加作品を描くため、自宅アトリエを出て、NPO頼れるふるさとネットの協力で、瀬戸内海の弓削島へ行きました。弓削島界隈は平清盛の統治、そして村上水軍などで知られる歴史ある土地柄。時代を超えた声が響いてきたのでしょうか、“弓削島のカンカン娘”はとてもポリフォニー(多声音楽的)な作品となっています。それは、いろいろなブリキ素材に描かれた画面から伝わってくるわけですが、それらを見ていると、ざわざわとした女そして男たちのつぶやき、そして、吹き抜ける潮風や乾いた瀬戸内海の陽光を感じてしまいます。

高須賀さんのブリキ画は、素材集めから始まります。島をうろついて、古くなった看板や、落ちている缶から、さらに下地になりそうな板を集めるわけです。身の回りのものを集めて何かをつくりだすことをブリコラージュというのですが、まさにブリコラージュ。
今回もまず集めた空き缶を焼き、それに油絵を描き乾燥をまちます。その間、拾ったブリキの看板に油絵を描きます。油絵が乾燥した後、拾った木の板に油絵で描かれた看板をキャンバス釘で打ちつけます。小さなカンカン絵(空き缶)は壊して広げ、同様に打ちつけます。

このように複雑な加工を施したブリキ画は珍しいので、島の人が入れ替わり立ち換わり野次馬となり現れる。“カンカン娘”の画面中央の白い裸体の女は、小さなカンカン絵を描きながらイメージを固めていくなかで生み出されたそうです。描くところを見ていた島の女たちのから声があがる。「あれはわたし?ではないよね」と。島の女との競作かもしれないですね。まめに釘を打っていると「釘打ちが好きなんだ」とも言われてしまう。みんな自分のことのように愛おしく絵を見てくれたのです。画面に打ち付けられたおびただしい数のカンカン絵の人たちはそんな島の人たちなのではないでしょうか。

                                                                                                                  東京造形大学非常勤講師 大竹  誠






家族の肖像 2012.2 180×180㎝ 油絵、ブリキ広告板、空き缶、合板

弓削島のカンカン娘 (右 2012.3〜4瀬戸内海弓削島で制作 )
2012.4 134×87㎝ 油絵、ブリキ広告板、空き缶、古材














 ⓒMasaru TAKASUKA